読書手帖「The New Testament」

この本は単なるギリシャ新約聖書ではありません。

キリスト教にはローマカトリックプロテスタント諸派のように日本で広く知られている教会以外に、東方正教と呼ばれる流れに属する教会があります。

 

その最大教派がいわゆる正教会もしくは東方正教会です。他にも非カルケドン派などがありますが、ここでは最大教派となる正教会について述べます。

 

正教会は各国ごとに教会組織があり、それぞれの言語で奉神礼(リトゥルギア)を行います。

 

その際に当然聖書の読みもあるわけです。

 

この本は、ギリシャ語を奉神礼の言語として使う正教会が、奉神礼で使う標準のギリシャ新約聖書テキスト本文を載せたものです。

 

私達が日本で一般に手にするギリシャ語聖書は実のところ、19世紀後半ごろから現れた本文批評学に基づくテキストがほとんどです。

 

一番有名なのはネストレ・アーラント版でしょう。

 

しかし、正教会ではこれらの版を奉神礼で使うことはありません。

聖書も教会に伝えられてきた祈祷書のひとつだからです。

 

従ってギリシャ語の奉神礼用の聖書も写本による異動が地方教会によって発生することはありました。

 

この本はギリシャ語の奉神礼文を統一すべく1904年にコンスタンディヌーポリ総主教が認可したギリシャ語奉神礼用の新約聖書テキストなのです。

 

現在ではコンスタンディヌーポリ総主教庁系のギリシャ語で奉神礼を行う正教会では、新約聖書は基本的にこのテキストが奉神礼で読まれます。

 

日本では販売されていないので、珍しい本と言えるでしょう。

 

在庫切れになっている場合でも、注文を入れると、しばらく待たされますが定価で取り寄せてくれるようです。

(私は実際に取り寄せてくれました)

 

正教会ギリシャ新約聖書本文に興味がある方は入手の価値ありです。

 

なお正教会の奉神礼で使うギリシャ語は全て、古典ギリシャ語再建音では無く、現代ギリシャ語発音で読まれるのが一般的です。

 

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